再生医療とは?幹細胞・PRP療法の違いとリスクを解説
「再生医療とは、失われた組織を元どおりにする治療なのか」「幹細胞療法とPRP療法は何が違うのか」と疑問に思う方もいるでしょう。再生医療には、承認された再生医療等製品を使う治療のほか、医療機関が提供計画を提出して行う細胞治療など、複数の枠組みがあります。
幹細胞療法は細胞そのものを利用する治療であり、PRP療法は患者本人の血液から血小板を多く含む血漿を調製して利用する治療です。どちらも対象疾患や調製方法によって期待される作用とリスクが異なり、効果が保証されるわけではありません。この記事では、再生医療の基本、幹細胞療法とPRP療法の違い、治療前に確認したい注意点を解説します。
再生医療とは細胞などを利用して修復を目指す医療
実用化された治療がある一方、研究段階または自由診療として提供されるものもあり、有効性や安全性に関する根拠の程度は一様ではありません。
再生医療で目指すこと
再生医療の主な目的は、損傷した組織の修復を助けたり、失われた機能を補ったりすることです。治療によっては、投与した細胞の定着や分化だけでなく、細胞や血小板から放出される物質の働きを利用する考え方もあります。症状が軽減することと、組織が完全に元どおりになることは同じではありません。治療目標は対象疾患や方法によって異なるため、何を改善する治療なのかを個別に確認する必要があります。
再生医療に含まれる主な治療
再生医療には、骨髄や脂肪などにある体性幹細胞、ES細胞、iPS細胞などを利用する細胞治療があります。患者本人の細胞を使う「自家細胞治療」と、提供者の細胞を使う「他家細胞治療」にも分けられます。PRP療法は、自己血を処理して血小板を多く含む血漿を患部に用いる治療です。PRPは幹細胞移植ではなく、幹細胞療法とは使用する材料が異なります。同じ名称でも、細胞の種類や加工方法、投与経路が違えば別の治療として評価しなければなりません。
再生医療を理解するために知っておきたい制度
再生医療等安全性確保法の役割
対象となる再生医療等技術を提供する際は、事前に委員会の審査を受け、提供計画を提出するなどの手続きが必要です。再生医療等は、使用する細胞や技術などに基づき第一種から第三種に分類されます。第一種と第二種は特定認定再生医療等委員会、第三種は認定再生医療等委員会も審査できます。委員会では科学的妥当性、安全性、生命倫理への配慮などが確認され、提供後にも疾病等の報告や定期報告が行われます。ただし、提供計画の提出や委員会審査は、国による治療効果の承認ではありません。
再生医療等製品の承認制度
企業が製造販売する再生医療等製品は、医薬品医療機器等法に基づく審査の対象です。品質、有効性、安全性に関する資料が審査され、承認された効能や使用方法の範囲が定められます。また、製品の特性を踏まえた条件及び期限付承認制度もあります。これは安全性が確認され、有効性が推定された段階で条件と期限を付して承認し、その後にデータを集めて改めて検証する仕組みです。承認製品であっても、すべての疾患や使用目的に適応できるわけではありません。
幹細胞療法の仕組みと特徴
幹細胞の主な種類
体性幹細胞は骨髄や脂肪など、すでに形成された身体の組織に存在する幹細胞です。ES細胞とiPS細胞は、さまざまな細胞へ分化できる性質を持ちますが、由来や作製方法は異なります。また、自家細胞は患者本人、他家細胞は別の提供者に由来します。幹細胞は種類によって分化能力、製造工程、免疫反応などの検討事項が異なります。研究段階のiPS細胞技術と、自由診療で提供される幹細胞療法を同一視しないことも大切です。
幹細胞療法の一般的な流れ
はじめに診察や検査を行い、疾患や身体の状態から治療の適応を検討します。自家細胞を使う場合には、脂肪や骨髄などから組織を採取することがあります。その後、治療内容に応じて細胞の分離、培養、加工、品質確認を行い、患部や血管などへ投与します。投与後は短期的な有害事象に加え、必要に応じて長期的な経過も観察します。採取部位、培養の有無、投与方法、観察期間は治療計画ごとに異なります。
幹細胞療法で検討すべきリスク
幹細胞療法では、組織の採取や注射、手術に伴う痛み、出血、感染などが起こる可能性があります。加工や保管を伴う場合には、細菌やウイルスなどの混入を防ぐ品質管理も欠かせません。他家細胞では免疫反応が検討事項となり、細胞の性質や治療法によっては意図しない組織形成や過剰な増殖なども安全性評価上の論点になります。患者本人の細胞を使う自家細胞治療でも、無条件に安全とはいえません。効果が得られず、必要な標準治療を受ける時期が遅れる不利益にも注意が必要です。
PRP療法の仕組みと特徴
PRP療法の一般的な流れ
PRP療法では患者本人から採血し、遠心分離などによって血液成分を分け、血小板を多く含む部分を調製します。完成したPRPは、患部への注射や手術部位への使用など、目的に応じた方法で投与されます。治療後は、注入部位の状態や症状の変化を確認します。採血量、使用機器、血小板濃度、保存方法、投与回数に共通の方法があるわけではありません。具体的な工程は、治療計画や医療機関によって異なります。
PRP療法で検討すべきリスク
PRP療法では、採血や注射に伴う痛み、内出血、腫れが生じる場合があります。注入後、一時的に疼痛や赤みが現れることもあります。また、皮膚や組織を針などで貫く処置であるため、感染の可能性を完全には排除できません。投与部位によっては、血管や神経など周囲の組織を傷つけるリスクも検討されます。自己血由来であっても、副作用や処置に伴うリスクがなくなるわけではありません。症状が改善せず、追加治療が必要になる可能性もあります。
PRP療法の効果に差が生じる要因
PRP療法への反応は、対象疾患、損傷の程度、発症からの期間、患者の健康状態などによって異なる可能性があります。さらに、調製方法や含まれる血小板・白血球の状態、投与部位、投与回数、併用するリハビリなども結果に関係し得ます。血小板の濃度が高いほど効果も高いと単純に判断することはできません。研究結果を見る際は、自分と同じ疾患を対象とし、調製法や投与方法が近い研究かどうかを確認することが重要です。
幹細胞療法とPRP療法の違い
両者の大きな違いは、幹細胞療法では細胞を、PRP療法では自己血から調製した血小板を多く含む血漿を利用する点です。工程、期待される作用、対象疾患、投与方法も異なります。治療名だけで効果や身体的負担の大小を比べることはできません。治療材料と作用の考え方の違い
幹細胞療法は生きた細胞を利用し、細胞が放出する物質の作用や組織への関与などが検討されます。PRP療法は幹細胞ではなく、血小板を多く含む自己血由来成分を利用し、血小板などから放出される因子が修復環境へ働くことを期待する治療です。作用する仕組みが理論的に説明されていても、それだけで人への臨床効果が証明されたことにはなりません。対象疾患ごとの研究や治療成績を分けて確認する必要があります。
治療工程と負担の違い
幹細胞療法では、脂肪や骨髄などの組織採取が必要になる場合があります。培養を伴う治療では、採取から投与までに期間を要することもあります。PRP療法は採血後に血液成分を調製して投与する流れが一般的ですが、保存方法や投与回数などは一定ではありません。麻酔の有無、通院回数、処置後の管理、検査を含めた総費用まで比較することが大切です。自由診療か保険診療かについても、治療名だけで判断せず、適応や使用条件を確認しましょう。
リスクと不確実性の違い
両方に共通するのは、採取や注射、投与に伴う痛み、出血、感染などのリスクです。幹細胞療法では、細胞加工の品質、免疫反応、投与後の細胞の挙動などが検討事項になります。PRP療法では、採血や注入部位に関係する局所的な有害事象が主な確認事項です。有効性の根拠や長期データの蓄積は、疾患、調製法、投与方法ごとに異なります。単純にどちらが優れているとは評価できません。
再生医療を受ける前に確認したいこと
治療を検討するときは、名称や広告だけで判断せず、対象疾患に対する根拠、代替治療、提供体制を確認しましょう。説明同意文書には、期待される利益だけでなく、不利益や治療後の対応も記載されているかを見る必要があります。疑問が残る場合は、その場で決めず、別の医師へ相談することも選択肢です。治療の適応と根拠を確認する
自分の診断名や症状が治療計画の対象に含まれるかを確認し、期待される効果を「痛みの軽減」「機能の改善」など具体的に質問しましょう。同じ疾患と同じ治療方法を対象にした研究があるか、いつ効果を判定するのか、改善しなかった場合に何を行うのかも確認します。体験談や症例写真、提供計画の公開だけでは、有効性の十分な証明にはなりません。標準治療や経過観察を含め、ほかの選択肢との違いも説明してもらうことが大切です。
安全管理と治療後の対応を確認する
使用する細胞やPRPの採取元、加工場所、管理方法を尋ね、どのような品質確認が行われるか説明を受けましょう。起こり得る有害事象、異常時の連絡先、診療体制、経過観察の期間や検査内容も重要です。健康被害が生じた場合の治療費や補償の有無・範囲は、治療前に個別確認が必要です。治療を中止する基準や記録の保管方法についても、説明同意文書で確認しておくと安心です。
費用と公的な情報を確認する
費用は診察、検査、採取、加工、投与、経過観察まで含めた総額で確認します。追加投与や合併症への処置が別料金になるかも尋ねましょう。厚生労働省の公開システムでは、再生医療等提供計画の情報を確認できます。再生医療等製品を使う場合は、承認された効能や使用方法に該当するかも確認が必要です。提供計画の公開と、再生医療等製品の薬事承認は別の制度です。公開情報があることや費用が高いことだけで、効果や医療機関の優劣は判断できません。
慎重に検討したい説明や広告
「必ず治る」「副作用がない」など、効果や安全性を保証する表現には注意が必要です。関係の薄い幅広い疾患に同じ治療が有効だとする広告も、疾患ごとの根拠を確認しましょう。提供計画の提出や委員会審査を、国が効果を認めた証拠のように説明していないかも確認します。利益だけでなく、不利益、代替治療、治療を受けない選択肢まで説明されるかが重要です。即日の契約や前払いを強く求められた場合は、説明文書を持ち帰って慎重に検討しましょう。
まとめ
再生医療という名称だけで、効果や安全性を判断することはできません。対象疾患に対する根拠、制度上の位置づけ、代替治療、総費用、治療後の対応を個別に確認しましょう。説明同意文書を持ち帰り、標準治療を担当する医師や再生医療に詳しい医師へ相談したうえで、納得できる治療を選ぶことが大切です。
【参考文献】
- 厚生労働省 再生医療等提供計画の提出等について
- 日本再生医療学会 設立趣旨
- 医薬品医療機器総合機構 再生医療等製品
- 厚生労働省 再生医療等の安全性の確保等に関する法律
- 厚生労働省 認定再生医療等委員会について
- 厚生労働省 薬事審議会議事録
- 厚生労働省 薬事承認制度の比較資料
- 米国食品医薬品局 Important Patient and Consumer Information About Regenerative Medicine Therapies
- 厚生労働省 再生医療等提供計画公開情報 自己多血小板血漿療法
- 厚生労働省 再生医療等提供計画公開情報 多血小板血漿を用いた皮膚再生治療
- 厚生労働省 臨床研究等提出公開システム 凍結PRPの安全性評価研究
- 近畿厚生局 再生医療等に関する情報のご案内