幹細胞の種類は何が違う?iPS細胞・ES細胞・体性幹細胞を比較

幹細胞の種類は何が違う?iPS細胞・ES細胞・体性幹細胞を比較

再生医療

幹細胞にはiPS細胞、ES細胞、体性幹細胞などがありますが、これらは何が違うのでしょうか。幹細胞は分類する基準によって呼び方や範囲が変わるため、すべてが同じ階層の用語とは限りません。

この記事では、由来と作製方法を基準として、代表的な幹細胞の種類を比較します。iPS細胞とES細胞は幅広い細胞へ分化できる多能性幹細胞であり、体性幹細胞は通常、存在する組織に関連した細胞を生み出します。
それぞれの由来、分化能力、増殖性、倫理面、安全性評価の違いに加え、研究や治療の情報を見る際の注意点も解説します。

幹細胞研究には再生医療などへの期待がありますが、すべてが確立した治療として利用できるわけではありません。細胞の種類ごとに特徴と課題が異なることを理解しておきましょう。

iPS細胞とES細胞と体性幹細胞の違い

iPS細胞とES細胞と体性幹細胞の違い

三種類の主な違いは、細胞の由来、分化できる範囲、培養下での増やしやすさ、倫理上の論点などにあります。どの幹細胞が一律に優れているのではなく、目的や対象疾患に応じて適した細胞が異なります。

三種類の違いがわかる比較表

iPS細胞とES細胞は、どちらも成体を構成する幅広い細胞へ分化できる「多能性」を持ちます。万能細胞と呼ばれることもありますが、個体そのものを作れるという意味ではありません。体性幹細胞は体内の組織に存在し、その維持や修復に関わります。

比較項目 iPS細胞 ES細胞 体性幹細胞
由来 皮膚や血液などの体細胞を初期化して作製 初期胚の胚盤胞に由来 身体の各組織に存在
分化能力 幅広い細胞へ分化できる 幅広い細胞へ分化できる 通常は関連する組織の細胞に限定される
増殖性 培養下で増やせる 培養下で増やせる 種類や由来組織によって異なる
倫理面 胚を使わず作製できるが、利用方法に応じた検討は必要 胚の利用に関する倫理的検討が必要 採取方法や利用目的に応じた検討が必要
主な安全性評価 未分化細胞の残存、遺伝的変化、目的外細胞など 未分化細胞の残存、目的外細胞、免疫反応など 細胞の由来、加工方法、品質、投与方法など

表の内容は代表的な傾向であり、細胞株、由来組織、培養方法によって性質は変わります。また、iPS細胞は患者本人の細胞から作る自己由来だけでなく、他人の細胞から作製した他家由来の利用も想定されます。

共通点と大きな違い

三種類に共通するのは、自分と同じ性質を持つ細胞を作る自己複製能力と、別の働きを持つ細胞へ変化する分化能力です。iPS細胞とES細胞は似た多能性を持ちますが、材料となる細胞と作製過程が異なります。

体性幹細胞は、体内で組織の細胞を補充する役割を担い、分化範囲は通常その組織に関連する範囲です。分化能力の広さだけで選ぶのではなく、作製期間、品質管理、利用目的まで含めて考える必要があります。

幹細胞の定義と分類方法

幹細胞の定義と分類方法

幹細胞の分類方法は一つではありません。由来による分類と分化能力による分類は別の切り口であり、この記事で扱う三種類がすべてを網羅する厳密な分類表ではない点に注意してください。

幹細胞が持つ二つの基本的な性質

幹細胞には、自己複製能力と分化能力という二つの基本的な性質があります。自己複製能力は、分裂して自分と同じ性質を持つ細胞を作る力です。ただし、すべての幹細胞が無制限に増え続けるという意味ではありません。

分化能力とは、特定の形や働きを持つ細胞へ変化する力です。単に未分化な状態にあるだけではなく、自己複製と分化という性質を踏まえて幹細胞として扱われます。その役割は、体内での組織維持から研究用細胞の供給まで種類によって異なります。

由来による分類と分化能力による分類

由来と作製方法に注目すると、胚に由来するES細胞、体細胞から人工的に作るiPS細胞、体内の組織に存在する体性幹細胞などに整理できます。一方、分化能力では、全能性、多能性、多分化能といった用語が使われます。

iPS細胞とES細胞は由来が違っても、どちらも多能性幹細胞に分類されます。全能性は多能性と同じ意味ではありません。また、体性幹細胞には造血幹細胞や神経幹細胞などがあり、「体性幹細胞」という一つの細胞が存在するわけではありません。分類用語の使い方には研究分野による幅もあります。

iPS細胞の特徴

iPS細胞の特徴

iPS細胞は、体細胞を多能性のある状態へ初期化して作る幹細胞です。幅広い細胞へ分化させられるため、再生医療、疾患研究、創薬研究への応用が検討されています。

体細胞を初期化して作る多能性幹細胞

iPS細胞の材料には、皮膚や血液などから得られる体細胞を利用できます。特定の因子を細胞内で働かせることで、すでに役割が決まった体細胞の状態を初期化し、多能性を持たせます。完成したiPS細胞は、材料となった体細胞とは性質も役割も異なります。

iPS細胞はES細胞に似た分化能力と自己複製能力を持ちますが、作製した細胞がすべて均一になるとは限りません。細胞株や作製方法による品質の違いを確認することが、研究や医療応用では重要です。

iPS細胞の利点と課題

iPS細胞は幅広い細胞へ分化できるため、目的の細胞を作って機能を補う研究に加え、病気の仕組みを調べる疾患モデルにも利用できます。患者由来の細胞から病気に関係する細胞を作り、薬の候補や毒性を評価する研究も行われます。

ただし、自己由来と他家由来では、作製に必要な期間や費用、免疫反応の考え方が異なります。本人の細胞から作ったiPS細胞であっても、拒絶反応やその他のリスクが完全になくなるとは限りません。

医療応用では、未分化細胞の残存、遺伝的な変化、目的外の細胞の混在などを評価します。造腫瘍性は必ず腫瘍が生じるという意味ではなく、製造工程を通じて評価、管理すべきリスクです。通常はiPS細胞をそのまま移植するのではなく、目的の細胞へ分化させたうえで利用が検討されます。

ES細胞の特徴

ES細胞は、初期胚の胚盤胞に含まれる細胞から樹立される多能性幹細胞です。幅広い細胞へ分化でき、培養下で増やせる点はiPS細胞と共通しています。

初期胚に由来する多能性幹細胞

胚盤胞とは、受精後の初期段階に形成される構造です。ES細胞は、その内側にある細胞の集まりに由来する細胞を培養して樹立します。研究室内で未分化な状態を保ちながら増やせる性質があり、発生の仕組みや病気の研究、細胞製品の開発などに利用されます。

ES細胞の多能性は、成体を構成する幅広い細胞へ分化できる性質を指し、ES細胞だけで個体そのものへ成長できるという意味ではありません。医療への応用では、目的の細胞へ分化させてから利用する方法が検討されます。

ES細胞の利点と倫理上の論点

ES細胞は多能性幹細胞として、発生や分化誘導の研究に用いられてきました。その一方、胚に由来するため、細胞の樹立や利用には生命倫理上の検討が伴います。日本では、ヒトES細胞の樹立、分配、使用などについて、指針に基づく手続きが設けられています。

倫理面は単純な良し悪しではなく、胚の利用目的や研究計画を適切に審査、管理するための論点です。また、移植する細胞が他家由来であれば免疫反応への対応が課題になり得ます。未分化細胞の残存などを含む造腫瘍性についても、iPS細胞と同様に評価が必要です。

体性幹細胞の特徴と主な種類

体性幹細胞の特徴と主な種類

体性幹細胞は身体のさまざまな組織に存在し、細胞の補充や組織の維持に関わります。成体幹細胞と近い意味で使われることもありますが、由来する組織によって性質は異なります。

体内の組織を維持する幹細胞

体性幹細胞は、失われた細胞を補充し、組織を維持する役割を担います。通常は存在する組織と関係する細胞へ分化するため、iPS細胞やES細胞よりも分化範囲が限定的です。その一方で、目的とする組織に近い性質を持つ場合があります。

体性幹細胞の増殖性や分化能力は、幹細胞の種類、採取した組織、培養条件によって変わります。体内に存在するから安全性が一律に高い、あらゆる損傷を修復できるということではありません。

造血幹細胞と神経幹細胞

造血幹細胞は、赤血球や白血球など複数の血液系細胞を生み出す体性幹細胞です。神経幹細胞は、神経細胞や、神経の働きを支えるグリア細胞など、神経系の細胞へ分化します。

複数の細胞を生み出せる体性幹細胞でも、iPS細胞やES細胞と同じ多能性を持つわけではありません。同じ体性幹細胞という分類でも、名称ごとに分化範囲、採取方法、増やしやすさ、利用実績が異なります。

間葉系幹細胞を見るときの注意点

間葉系幹細胞は、骨髄や脂肪など複数の組織から得られる細胞集団として扱われることがあります。ただし、由来組織や採取後の培養条件が異なれば、含まれる細胞や性質も同じとは限りません。

「間葉系幹細胞」という名称が同じでも、製造方法や品質、期待できる働きまで同一とは限りません。治療情報を見るときは、脂肪由来や骨髄由来といった由来だけで優劣を決めず、対象疾患に対する臨床的な根拠や安全性評価を確認する必要があります。

幹細胞の研究利用と治療情報の注意点

幹細胞は再生医療だけでなく、発生研究、疾患モデル、創薬研究にも利用されます。基礎研究、臨床研究、治験、承認された製品や治療は、それぞれ位置付けが異なります。

再生医療と疾患研究と創薬での使われ方

再生医療では、幹細胞から目的の細胞へ分化させ、失われた機能を補う応用が研究されています。なお、再生医療という言葉が、常に幹細胞を使う治療だけを意味するわけではありません。

疾患研究では、患者由来のiPS細胞などから病気に関係する細胞を作り、細胞の変化や病態を調べます。創薬研究では、作製した細胞を使って薬の候補や毒性を評価します。研究で有望な結果が示されたことと、一般に受けられる治療として有効性や安全性が確認されたことは区別が必要です。

また、体性幹細胞は種類によって臨床利用の蓄積が異なるため、幹細胞を用いる技術をすべて一括して研究段階とはいえません。用途ごとに必要な分化能力、増殖性、品質が異なります。

幹細胞治療を検討するときの確認項目

幹細胞治療を検討するときは、使われる細胞の正式名称、由来組織、自己由来か他家由来かを確認します。さらに、承認された治療や製品なのか、臨床研究や治験なのか、法に基づく提供計画による医療なのかを区別することが大切です。

提供計画が制度上の手続きを経ていることと、対象疾患への有効性が国に認められていることは同じではありません。対象疾患に対する根拠が査読論文や公的情報で示されているか、想定される副作用や不確実性、代替治療、費用について十分な説明があるかも確認しましょう。

「幅広い病気に効く」「副作用がない」「若返る」などの断定的な広告表現には注意が必要です。自由診療であることだけを理由に無効または違法とは判断できませんが、治療の有効性と安全性は、幹細胞の種類だけでは決められません。製造方法、品質、投与経路、対象疾患などを含めた個別の評価が必要です。

まとめ

幹細胞には複数の分類方法があります。この記事では、由来と作製方法を基準にiPS細胞、ES細胞、体性幹細胞を比較しました。iPS細胞は体細胞を初期化して作られ、ES細胞は初期胚に由来します。両者は多能性幹細胞ですが、体性幹細胞は体内の組織に存在し、通常は関連する範囲の細胞を生み出します。

分化能力が広いほど一律に優れているわけではなく、利用目的、製造方法、品質、免疫反応や造腫瘍性を含む安全性評価が重要です。研究成果と、現在受けられる承認済みの治療や製品も分けて考える必要があります。

幹細胞治療を検討する場合は、広告上の名称だけで判断せず、細胞の由来、治療の位置付け、期待できる効果とリスクを医療機関へ確認してください。不明な点があるときは、必要に応じて主治医や関連分野の専門医へ相談しましょう。

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