第一種再生医療とは?第二種・第三種との違いを整理
「第一種再生医療等」と聞くと、第一種が最も優れた治療なのか、第二種・第三種より効果が高いのかと疑問に思う方もいるでしょう。第一種から第三種までの数字は治療効果の順位ではなく、人の生命や健康への影響を踏まえた制度上の分類です。
この記事では、再生医療の1種に該当し得る技術、三分類の違い、提供前後の手続を整理します。個別の区分は、細胞の由来だけでなく、加工方法や投与目的などでも変わるため、公的情報と医療機関の説明を確認することが大切です。
第一種再生医療等は特に慎重な管理が必要な区分
第一種という名称が示す意味
法律では、再生医療等技術を第一種、第二種、第三種に分類し、影響の程度に応じて審査や報告などの手続を定めています。第一種は規制上、より慎重な確認が求められる区分であり、品質や治療成績のランクではありません。同じ疾患に対する医療でも、使用する細胞、加工内容、遺伝子改変の有無、投与目的が異なれば、別の区分になる可能性があります。
分類だけでは治療効果を判断できない
制度上のリスク分類と、治療の有効性を支える臨床的な根拠は別の評価軸です。提供計画の提出や委員会審査が行われていても、個々の患者に対する効果が保証されるわけではありません。研究として行われるのか、治療として提供されるのかを確認し、標準治療との関係や期待できる効果の根拠について説明を受けましょう。
第一種再生医療等に分類される主な技術
iPS細胞やES細胞を用いる技術
iPS細胞に代表される人工多能性幹細胞や、ES細胞に培養などの加工を施して用いる技術は、第一種の対象となります。人工多能性幹細胞様細胞も法令上の対象に含まれます。多様な細胞へ変化する性質を利用できる反面、影響が明らかでない点も含めた評価が必要です。対象疾患や実際の提供状況は、個別の提供計画で確認する必要があります。
遺伝子を導入または改変した細胞を用いる技術
体外へ取り出した細胞に遺伝子を導入したり、ゲノム編集を行ったりした後、体内へ投与する技術も第一種に含まれ得ます。ウイルスベクターを使わないゲノム編集であっても、具体的な操作によっては該当します。「遺伝子」という言葉を含む医療が、すべて同じ区分になるわけではありません。承認済みの再生医療等製品を承認された用法などで使用する場合は、制度上の扱いが異なることがあります。
他人や動物の細胞を加工して用いる技術
治療を受ける本人以外から採取した細胞を加工して使用する同種の技術や、動物の細胞を構成細胞として含む細胞加工物を投与する技術も対象となり得ます。細胞提供者の適格性や感染症の確認などが、安全管理上の論点です。ただし、加工工程で補助的に動物細胞を共培養へ用いるだけの場合は、同じ扱いとは限りません。他人の細胞だから危険、自己細胞だから安全と単純には判断できません。
特定核酸等を体内へ導入する技術
制度改正により、人の体内で細胞へ一定の核酸などを導入する医療技術も対象に加わりました。遺伝子発現に必要な情報を持つ核酸や、核酸またはヒストンを加工する機能を持つ物などが定義に含まれ、ウイルスベクターや脂質ナノ粒子を使う例があります。一般的な核酸医薬がすべて第一種になるわけではなく、承認された医薬品を承認用法などで使う場合は対象外となり得ます。
第一種と第二種と第三種の違い
| 区分 | 制度上の考え方 | 主な審査委員会 |
|---|---|---|
| 第一種 | 影響が明らかでない、または重大な影響のおそれがある技術 | 特定認定再生医療等委員会 |
| 第二種 | 生命や健康へ影響を与えるおそれがある技術 | 特定認定再生医療等委員会 |
| 第三種 | 第一種と第二種に該当しない技術 | 認定再生医療等委員会 |
第一種と第二種の対象技術の違い
第一種では、多能性幹細胞、遺伝子を改変した細胞、同種細胞などを用いる技術が代表例です。第二種では、培養した体性幹細胞を使用する技術や、細胞本来の機能とは異なる目的で用いる「非相同利用」などが含まれ得ます。培養の有無、利用目的、投与部位によって判断が変わるため、体性幹細胞なら必ず第二種とは限りません。
第二種と第三種の対象技術の違い
第三種は、第一種と第二種のいずれにも当てはまらない再生医療等技術です。自己の体細胞を一定の加工後に用いる技術や、条件を満たすPRPを用いる技術などが代表例として挙げられます。PRPでも、投与部位や利用目的によって相同利用かどうかの判断が変わり、第二種となる場合があります。第三種であっても、感染や副作用などの可能性がなくなるわけではありません。
審査を担当する委員会の違い
第一種と第二種は、高度な審査能力と第三者性を備える特定認定再生医療等委員会が審査します。第三種は認定再生医療等委員会が担当し、第三種のみを扱う委員会もあります。委員会は提供計画を基準に照らし、提供の適否や留意事項について意見を述べます。委員会審査は、患者への治療効果を保証する仕組みではありません。利益相反がどのように管理されているかも確認項目になります。
第一種再生医療等を提供するまでの手続
提供計画を作成して委員会の審査を受ける
提供計画には、医療機関、対象疾患、対象者の基準、技術内容、使用する細胞、投与方法、製造・品質管理、安全確保措置などが記載されます。特定認定再生医療等委員会は、提供基準への適合性や提供の適否を審査します。治療として提供する場合は、期待される利益が安全性上のリスクを上回ると十分に予測されるかも論点です。条件や留意事項が付されたときは、医療機関の対応も確認しましょう。
厚生労働大臣へ提供計画を提出する
医療機関は、委員会の意見書などを添えて提供計画を厚生労働大臣へ提出します。第一種では、提出後、原則として90日を経過するまで提供できません。合理的な理由による期間の延長や、基準に適合すると認められた場合の短縮もあります。適合性は厚生科学審議会再生医療等評価部会でも審議されますが、国への計画提出は、医薬品医療機器等法上の製品承認とは別の手続です。
提供開始後も報告と安全管理が続く
提供後は、実施日時や内容などの記録を作成・保存し、提供に起因すると疑われる疾病、障害、死亡、感染症について報告する仕組みがあります。提供状況の定期報告も必要で、状況に応じて計画変更、提供中止、改善命令などが行われる可能性があります。患者側も、体調変化があった場合の連絡先、受診の目安、長期的な経過観察の予定を確認しておくことが重要です。
治療を検討するときに確認したい安全性と費用
第一種という分類名だけでは、個別の効果、リスク、費用は判断できません。説明同意文書を読み、標準治療や治験などの選択肢と比較しながら検討する必要があります。期待できる効果と根拠を確認する
治療によって何を改善するのかを、症状の軽減や機能の改善など具体的に確認します。根拠が動物実験や少数例なのか、比較試験や査読論文なのか、自分と同じ疾患や病期を対象としたデータがあるのかも質問しましょう。効果が得られない可能性や、効果が続く期間が不明な場合についても説明を受けることが大切です。標準治療の中断や併用は自己判断せず、主治医へ相談してください。
起こり得るリスクと治療後の対応を確認する
リスクは、細胞の採取、加工、投与という各段階に分けて確認すると整理しやすくなります。感染や免疫反応のほか、技術に固有の未知の影響や長期的な影響について、どのように説明されているかを確かめましょう。夜間・休日の連絡先、緊急時の受入先、治療後の検査項目と通院期間も事前に確認してください。健康被害が疑われた場合の報告方法や補償の仕組みも重要です。
費用と保険適用と補償を確認する
第一種から第三種までの分類だけで、保険適用の有無や自己負担額は決まりません。研究参加、自由診療、保険診療のどれに当たるのかを確認し、細胞採取、加工、投与、検査を含む総額を尋ねましょう。複数回投与や治療後の検査、有害事象への診療が別料金か、治療中止や細胞加工の失敗時に費用がどう扱われるかも書面で確認します。補償の内容と対象外になる条件も確認が必要です。
検討中の治療の分類と提供計画を確認する方法
公表されている提供計画を検索する
再生医療等安全性確保法運用支援システムの一覧から、医療機関名や地域などで検索します。再生医療等の名称、分類、対象疾患、審査した委員会名が、案内された内容と一致するか確認してください。説明・同意文書が公開されていれば、期待される利益、不利益、費用も確認します。一覧への掲載は、国が効果や個別の安全性を保証したことを意味しません。見つからない場合も直ちに違法と決めつけず、名称や更新状況を問い合わせましょう。
医療機関へ確認したい質問
相談時には、治療の区分と分類理由、提供計画の番号、審査した委員会名、最新の説明同意文書を確認します。研究か治療か、承認された製品や用法なのか、効果の根拠と主なリスクは何かも尋ねましょう。さらに、総費用、追加費用、補償、緊急時の相談先を確認します。その場で契約を急がず、必要に応じて主治医や専門医のセカンドオピニオンを利用することも選択肢です。
まとめ
第一種再生医療等は、人の生命や健康への重大な影響のおそれや、影響が明らかでない点を踏まえ、特に慎重な安全確保措置が求められる制度上の区分です。iPS細胞やES細胞、遺伝子を導入・改変した細胞、同種細胞などを用いる技術が代表例ですが、実際の分類は加工方法や使用目的を含めて判断されます。再生医療の1種という名称だけで、治療効果、安全性、保険適用、費用を判断することはできません。検討中の治療について公表された提供計画と説明同意文書を照合し、効果の根拠、リスク、総費用、補償、治療後の連絡体制について説明を受けましょう。不明点がある場合は、契約や治療開始の前に担当医や主治医へ相談してください。