鍼灸は保険適用になる?対象となる症状と必要な手続きを解説
「肩こりや腰痛で鍼灸を受けたいけれど、健康保険は使えるのだろうか」「医師の同意書はどこでもらえばよいのか」と疑問に思う方もいるでしょう。鍼灸は、すべての症状や施術で健康保険を利用できるわけではありません。
鍼灸は、対象となる疾病について医師の同意を得るなど、一定の要件を満たした場合に保険適用となる可能性があります。健康保険上は医療機関の診療と同じ扱いではなく、「療養費」として支給される仕組みです。この記事では、対象となる症状、同意書の取得方法、申請手続き、自己負担、保険適用外となるケースを順番に解説します。
鍼灸が保険適用になる主な条件
鍼灸が保険適用になるには、対象となる傷病であること、医師が施術に同意していること、医師による適当な治療手段がないことなどが判断要素になります。健康保険証や資格確認書を提示するだけで、自動的に保険が適用されるわけではありません。
最終的な支給の可否は保険者が審査するため、同意書があっても無条件に支給されるとは限りません。
保険適用の対象となる疾病
代表的な対象疾病は、神経痛、リウマチ、頸腕症候群、五十肩、腰痛症、頸椎捻挫後遺症の六疾病です。これら以外でも、慢性的な疼痛を主な症状とし、同じ範疇と認められる疾病が対象になる場合があります。
疾病名だけで保険適用が決まるのではなく、医師の判断や保険者の審査が必要です。腰痛症などに当てはまるように見えても、慰安や疲労回復だけを目的とする施術は別に判断されます。
医師の同意が必要となる理由
初回の療養費申請では、原則として保険医が作成した同意書を添付します。同意書は、対象となる症状や経過を診察した医師が、鍼灸施術の必要性について医学的に判断したことを確認するための書類です。
制度上は、医師による適当な治療手段がない場合が対象として考えられています。患者本人や鍼灸師の判断だけで、施術を健康保険の対象にすることはできません。診察の結果によっては、医師が同意しない場合もあります。
同じ疾病に対する病院の治療との併用制限
保険適用の鍼灸を受けている間に、同じ疾病について医療機関で治療を受けると、鍼灸が健康保険扱いにならないことがあります。同じ疾病に対する薬や湿布の処方も、一般に治療行為に含まれます。
診察、検査、鍼灸の同意書交付は、併用が制限される治療とは区別されます。また、別の疾病に対する診療まで一律に制限されるわけではありません。判断が難しいときは、主治医、施術所、加入先保険者へ事前に確認しましょう。
保険適用で鍼灸を受けるまでの手続き
手続きの行き違いを避けるには、施術前の確認が大切です。一般的には、施術所への相談、医療機関の受診、同意書の取得、申請書類の確認という順序で進めます。必要な様式や提出方法は加入先保険者によって異なる可能性があります。
加入先保険者と施術所へ事前に確認する
希望する施術所が健康保険の療養費を取り扱っているか、受領委任に対応しているかを確認します。あわせて、加入している協会けんぽ、健康保険組合、国民健康保険、後期高齢者医療制度などへ問い合わせましょう。
同意書の指定様式、書類の提出先、利用できる支払方法は、施術を受ける前に確認することが重要です。すべての施術所や保険者が、同じ手続きや受領委任に対応しているとは限りません。
医療機関を受診して同意書を依頼する
対象となる症状について医師の診察を受け、鍼灸施術への同意が可能か相談します。施術所または保険者から所定の同意書を受け取っている場合は、受診時に持参すると手続きを進めやすくなります。
症状、これまでの治療経過、服薬状況は医師へ正確に伝えましょう。医師の診断や医学的な判断によっては、同意書が交付されないこともあります。同意書の交付に伴う費用の扱いは、受診する医療機関などへ確認してください。
必要書類を確認して施術を開始する
申請では、医師の同意書、療養費支給申請書、健康保険の資格情報などが必要になります。受領委任の場合、申請書に記載された傷病名、施術日数、金額などを患者本人が確認して署名します。
償還払いでは、一度全額を支払った後に保険者へ申請するため、領収書なども必要です。申請書には内容を確認してから署名し、領収書と明細書は保管してください。必要書類は加入先保険者へ確認しましょう。
医師の同意書と継続時の再同意
医師の同意は、初回だけで無期限に有効となるものではありません。鍼灸の保険適用を継続する場合も、定期的に医師の文書による再同意を受ける必要があります。時期や提出方法は施術所と加入先保険者へ早めに確認してください。
同意書に記載される主な内容
同意書には、疾病名、症状、発病年月日、同意区分など、所定様式に沿った情報が記載されます。医師の署名など、同意を確認できる記載も必要です。患者や施術者が医師の記載部分を代筆するものではありません。
記載漏れや有効期間の問題があると、保険者から確認を求められる可能性があります。様式が変更されることも考えられるため、厚生労働省または加入先保険者が案内する最新版を使用しましょう。
継続には定期的な再同意が必要
協会けんぽの案内では、保険適用を継続するために、六か月ごとに医師の文書による同意が必要とされています。再同意の際は、医師が症状や経過を確認し、施術を継続する必要性を改めて判断します。
再同意の期限を過ぎた期間は、健康保険の対象にならない可能性があります。余裕を持って準備し、施術報告書などの必要性も施術所と保険者へ確認してください。再同意が必ず得られるとは限りません。
保険適用時の自己負担と支払方法
保険適用となる鍼灸には療養費の算定基準があり、加入者は自己負担割合に応じた額を負担します。ただし、年齢や所得、施術内容、訪問施術の有無などによって支払額が異なるため、一律の金額では示せません。支払方法には受領委任と償還払いがあります。
受領委任では窓口で自己負担分を支払う
受領委任に対応する施術所では、患者が窓口で一部負担金を支払い、施術者が残りの療養費を保険者へ請求します。病院の窓口払いと似ていますが、制度上は、患者が療養費の受領を施術者へ委任する方法です。
患者は療養費支給申請書の傷病名、施術日数、金額を確認したうえで署名します。受領委任でも保険者の審査は行われ、支給要件を満たさないと判断された場合には、後から追加負担を求められる可能性があります。
償還払いでは一度全額を支払う
償還払いは、患者が施術費を一度全額支払い、後から加入先保険者へ療養費を請求する方法です。一般に、療養費支給申請書、医師の同意書、領収書などを提出します。
申請した金額のすべてが、そのまま戻るわけではありません。保険者の審査後、支給対象として認められた額が支払われます。長期かつ頻回な施術などでは、受領委任から償還払いへ変更される場合もあるため、提出書類や期限を確認しましょう。
自己負担額が変わる主な要素
自己負担額には、年齢や所得などによる健康保険上の負担割合が影響します。また、はりのみ、きゅうのみ、両方の併用、初回、電療、訪問など、実際の施術内容によって療養費の算定額が変わります。
保険対象外の施術を追加すると、自由診療分が別途必要になる可能性があります。施術前に、保険対象部分と自由診療部分の区分、窓口での見込額を確認してください。料金基準は改定されることがあるため、施術日時点の案内を見ることも大切です。
鍼灸が保険適用外となる主なケース
対象疾病や医師の同意などの要件を満たさない施術は、原則として全額自己負担です。ただし、保険適用外だからといって、鍼灸を受けること自体が禁止されるわけではありません。施術所の判断により、自由診療として受けられる場合があります。
医師の同意を得ていない場合
初回申請に必要な医師の同意を得ずに受けた施術は、原則として健康保険の対象になりません。医師へ口頭で相談しただけでは、文書による同意という要件を満たさない場合があります。
後から同意書を取得しても、すでに受けた施術へ必ず遡って保険が適用されるわけではありません。継続時に再同意の期限を過ぎた場合も対象外となる可能性があるため、同意日と施術開始日の関係を事前に確認しましょう。
同じ疾病で医療機関の治療を受けている場合
同じ疾病について医療機関で治療を受けながら、鍼灸にも健康保険を使うことは原則として認められません。病院で薬や湿布を処方されている場合も、鍼灸の療養費が対象外になる可能性があります。
ただし、診察、検査、同意書の交付は、併用が制限される治療とは区別されます。保険を使うために、自己判断で薬を中止したり通院をやめたりしないでください。別の疾病で通院中の場合は、対象疾病との関係を保険者へ確認しましょう。
疲労回復や予防を目的とする場合
日常的な疲労回復、リラクゼーション、健康維持、予防などを主な目的とする鍼灸は、健康保険の対象になりません。慢性的な肩こりという訴えがあるだけで、療養費の対象疾病として認められるとも限りません。
美容鍼など、対象疾病の治療を目的としない施術は通常、自由診療になります。自由診療の料金は施術所が設定するため、施術内容だけでなく、総額や追加料金の有無についても事前に説明を受けましょう。
保険適用を希望するときの確認事項
鍼灸の保険適用を希望する場合は、加入先保険者、施術所、医師へそれぞれ必要事項を確認します。支給の可否は症状や治療状況、書類の内容によって変わるため、施術前の確認が欠かせません。制度改定や保険者ごとの運用差にも注意しましょう。
施術前に確認するチェック項目
施術前には、自分の症状が療養費の対象候補に当たるか、同じ疾病について病院の治療や処方を受けていないかを整理します。そのうえで、施術所の受領委任への対応、同意書の様式と取得時期を確認してください。
窓口での見込負担額、自由診療分の有無、継続時の再同意時期と必要書類まで確認すると安心です。ただし、これらを確認しても支給が確約されるわけではなく、保険者による審査があります。
確認先は加入先保険者と施術所
協会けんぽの加入者は各都道府県支部、健康保険組合の加入者は各組合、国民健康保険の加入者は市区町村などが主な確認先です。受領委任の取扱い、同意書の様式、提出書類、申請期限を尋ねましょう。
施術所には、保険施術への対応、支払方法、自由診療分の有無を確認してください。制度や料金は改定される可能性があるため、厚生労働省と加入先保険者の最新案内もあわせて確認することが大切です。
まとめ
鍼灸は、神経痛、リウマチ、頸腕症候群、五十肩、腰痛症、頸椎捻挫後遺症などについて、医師の同意を得るなどの要件を満たすと、療養費として保険適用になる可能性があります。六疾病以外でも認められる場合がありますが、疾病名だけで決まるものではありません。
同じ疾病に対する医療機関の治療とは原則として併用できず、継続時には定期的な再同意も必要です。受領委任と償還払いでは、窓口で支払う金額や申請方法が異なります。希望する施術所へ取扱いを確認したうえで医師に相談し、必要書類や支払方法について加入先保険者へ問い合わせましょう。